2019年11月1日、共通テストで行われる予定だった「民間外部試験の導入」が延期されることが決定しました。
2020年度から始まる共通テストでは、英語の試験で4技能を測定することを目的に「民間外部試験」の成績を用いることを発表していました。
それが、ここにきての延期発表…
おそらく来年に向けて英検やGTECの対策に乗り出していた学生はいっぱいいたと思います。学生だけではなく学校全体や大手予備校でも英検対策をカリキュラムに組み込んでいたところも多いです。当ブログでも外部試験導入や英検の形式変更についての記事をいくつか書いてきました。
そのため、このタイミングでの延期発表は「おいおいおい(* ゚Д゚)」って正直感じてしまいます。いまさら延期するくらいなら最初から導入しようなんて考えるなよ、って思っちゃいますよね~
しかし、この外部試験の導入はなぜ延期することになったんでしょうか。国としてもこのタイミングで延期発表なんて批判されることは分かっていたはずです。
そこで今回は延期されるに至った背景や、今後どうなっていくのかを考えていきます!
目次
導入システム上の問題
そもそもの導入システムが発表された時から批判はされてました。
システム自体は『共通試験英語で何を受ける?おすすめの外部試験を解説』で詳しく紹介していますが、まず注目したいのは評価方法ですよね。利用できる外部試験は「英検」「ケンブリッジ英検」「TOEFL」「TEAP」「GTEC」「IELS」と数多くありますが、その採点方式はもちろん試験によって違います。
そのため、これらの試験結果をまとめて評価するために大学側は「CEFR」に応じて成績を反映することになっていました。「CEFR」とは簡単に言えば英語でどれくらいできるのかという基準を6段階で示したものです。A1~C2までの評価段階があります。
つまり英検○級合格って人と、TOEFL△点の人はCFERでいうB1に相当するので、大学からすると同じ評価にするよ、みたいに。
これは確かにどうなんだ、って感じはしますよね。正直6段階の評価って差もあんまりつかないと思いますし、別々のテストの成績で評価しようってのはやっぱり難しいですね。このテストならもっと点を取れたかもってなるとまあ納得しづらい部分があります。
また、現在は民間試験の採点を大学生が行ってることも少なくありません。そういったところでも不信感であったり納得できない気持ちが生まれてくるのは確かです。
ただし、このシステムは大学側もあまりがっつりと利用する気はなかったと思います。点数として加算する、と発表していた大学は少ない。ほとんどの大学は出願条件として利用すると発表しており、求めるランクもそこまで高いものには設定していませんでした。
そもそも初年度利用を発表していたのは全体の6割程度の大学のみ。
そう考えると実施をしててもそんなに影響はなかったかもな、とも思います。ただ受験生からすれば勉強量も増えるし試験も増えるのでめんどくさかったのは確かですね(-∀-)
経済格差・地域格差
こちらも前から批判されていたことです。
やはり金額の問題は大きいですね。当ブログでも紹介したように、1番安い英検の1番安い級でも受験料として6000円はかかります。加えて対策本や過去問などを買うとさらに費用がかかります。
年に2回受験できるといっても、それだけでなかなかの負担になります。
そして経済格差を生み出しているのが、受けるのが「民間試験」であるということです。
民間試験は大学入試のタイミングなど関係なく受験することができます。別に受験学年にならなくても、です。
つまり、言い方がアレですが受験料さえ払えばいくらでも同じ形式を受験できるってことです。成績として利用できるのは受験学年で受けたものだけですが、本番と同じ形式を受験して練習してるかどうかってのは大きく影響しますよね。模試を受けて入試か模試を受けずに入試なら受けた方がいいに決まってます。
結局お金がある人が有利じゃないかって意見がでるのも納得できます。
またもう1つの格差が地域格差です。試験によっては受験地が極端に偏ってるってことですね。やはり都市部に集中してしまいます。
また受験地が遠くなるとその分交通費もかさみます。結果として経済格差も助長してしまうことになるわけです。
上のように、民間試験の利用は「不公平」につながりかねないんですね。ただ個人的には、大学側はそこを分かっていてなんとか平等性を保とうとしたんだと思ってます。さっきも言ったように成績に取り入れる大学は少ないし、求めるレベルも高くないことが多く、「そこまで外部試験重視してませんよ」って受験生にアピールをしてた気がします。
さて、その民間試験導入が延期になるきっかけとなったのがこの事件ですね…
「身の丈」発言
文部科学相である萩生田文科大臣が上のような経済格差・地域格差による不公平性についての意見を求められた時の言葉です。
「裕福な家庭の子が回数を受けてウオーミングアップができるということはあるかもしれないが、そこは自分の身の丈に合わせて、2回(の民間試験の受験)をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」(教育新聞2019/10/28)
それ言っちゃうか~って感じですね。まあ言いたいことは分かるというか、そう言うしかないんですけど…
言い方ももちろんですが、一番の問題はそう言わざるを得ないテスト形式を導入しようとしてたってことですよね。
経済格差を否定できないようなテスト形式を新たに導入しようとしたところがなんだかな、と思います。
この発言の前に、萩生田文科相は「『あいつ予備校行っててズルいよな』ってのと一緒で」的なことを言っていますが、そういった経済格差を少しでもなくすために、いわゆる「教育を受ける権利」を保証するテスト形式を導入しなきゃいけなかったんじゃないかなと感じますね。
そしてこの発言を機に批判や不信感が爆発し、延期することになったんでしょう。
でも逆に延期を発表するきっかけができてよかったかもしれません。このままズルズルいってても色々と批判も集まってたでしょうし、来年に入って延期発表なんて完全に手遅れですもんね。
なお、同文科相によると、2024年には新たな英語試験を導入する予定のようです。4技能を評価する、という方針は変わらないようですね。こちらも今回と同じようにならないことを願います。
まとめ
民間試験延期の流れを簡単にまとめると、
「評価方法の不安定さ」「経済格差・地域格差」によって長らくたまっていた公平性・平等性への不信感が「身の丈発言」によりピークに達した→このタイミングしかない、って感じで延期発表
といった感じでしょうか。もともと11月1日から外部試験受験時に必要な「共通ID」の手続きが始まる予定だったので、さらに影響が大きくなる前に延期を発表したということになります。
なぜこんなシステムを導入しようとしたのかは分かりません。もしかしたら深い闇があるのかも(´・ω・`)
ただし、この発表により多くの教育機関、そして学生に迷惑がかかったのは確かですし、これにより更なる不信感が募ったのも大きな問題です。
上のような不公平性の問題は、「民間試験にゆだねすぎた」ことから生まれているように思えます。今後に関しては、そこを改善しないとなにもよくならないでしょう。4技能を測定するという方針は必要だと思いますが、そこから先が宙ぶらりんすぎるというか、民間試験に丸投げ状態だった感も否めません…
それなら別に大学入試に利用というカタチじゃなくても、大学に入学してから民間試験を受験させ、その結果を大学での英語の成績に反映させてもいいじゃないかって思います。
2024年から導入されるであろう英語の試験がどんな形になるのかは分かりませんが、今回の一件により不信感が大きくなってるのは事実です。その中で人々を納得させれるテスト形式を発表できるのかってところですよね。
なんにせよ今回の延期発表により、教育現場では相当な混乱が起きています。そこには責任を感じてほしいな、と思ったりしてます…( ´_>`)
はあ、けっこうがんばって書いた外部試験の記事もボツにしないとだめかな…
そらまめでした( ´_>`)